医療従事者が終末期の現場で最も心を痛めるのが、延命治療をめぐる親族間の激しい意見対立や、家族が背負う深刻な罪悪感です。
本人の明確な意思が示されていない場合、主治医は家族に治療方針の代理決定を求めます。このとき、「1日でも長く生きていてほしい」と願う同居の家族と、「管につながれて苦しむ姿は見たくない」と主張する遠方の親族との間で激しい衝突が起こり、医療現場の同意取得がストップしてしまう事例は日常茶飯事です。
また、心停止時に心肺蘇生を行わない選択であるDNR(Do Not Resuscitate:蘇生処置拒否)に同意した家族が、本人の逝去後に「自分が親の命を見捨てたのではないか」「あのとき心臓マッサージを頼んでいれば助かったのではないか」と、終わりのない後悔に苛まれるケースも極めて深刻です。
家族にこのような過酷な決断の責任を背負わせないためには、本人が健康なうちから自らの価値観を言葉にして共有しておくことが最大の防波堤となります。