憲仁親王の急逝は、単なる悲報にとどまらず、日本の救急医療制度を根本から変革する強力な原動力となりました。当時、日本国内においてAED(自動体外式除細動器)の取り扱いは医師や看護師、救急救命士といった医療従事者のみに限定されており、公共施設やスポーツジムに設置されていたとしても、一般市民が使用することは医師法違反に問われるリスクがあったためです。
親王の逝去を受け、循環器内科の専門医や日本循環器学会、日本救急医学会などの医療団体から「現場にAEDがあり、居合わせた一般市民が即座に使用できていれば救えた可能性があったのではないか」という議論が一気に噴出しました。この声が厚生労働省を動かし、検討会での迅速な議論を経て、2004年7月、一般市民によるAEDの使用が法的に解禁されるという歴史的転換点を迎えます。
憲仁親王の遺志を継ぎ、妃の久子さまは現在も一般財団法人「日本AED財団」の名誉総裁を務められています。学校現場や駅、商業施設へのAED設置台数は劇的に増加し、現在では国内設置台数が60万台以上に達し、年間数千人規模の命を突然死の危機から救い出す基盤となっています。