臨床の最前線で日常的に交わされるのが、心肺蘇生拒否(DNAR / DNR)の確認だ。心停止時に胸骨圧迫や電気ショック、気管挿管を行わない合意を指すが、これが「一切の治療を放棄する」という意味で誤認されるケースが依然として多い。終末期医療の本質は、無益な侵襲的処置を避けつつ、痛みや苦痛を徹底的に緩和することにある。
かつて聖路加国際病院の院長を務めた日野原重明医師は、患者が自らの人生の主人公であり続ける医療のあり方を生涯にわたって説き続けた。過度な延命技術に頼るのではなく、命の質(QOL)を最優先にする思想は、いま臨床倫理のスタンダードとして再評価されている。蘇生を行わない選択は、死を急ぐことではなく、穏やかな自然死を受け入れるための医療的判断なのだ。