富士山が再噴火した場合、最も恐れられているのは溶岩流そのものよりも、偏西風に乗って首都圏へと運ばれる「広域降灰(火山灰)」による都市インフラの完全麻痺です。
富士山火山防災対策協議会が改定した最新ハザードマップでは、過去の研究知見を取り入れ、想定される火口範囲の拡大や溶岩流到達シミュレーションが大幅に見直されました。特に首都圏への影響予測は極めて深刻です。
宝永噴火と同規模の噴火が西風の気象条件下で発生した場合、噴火開始からわずか2〜3時間で東京・神奈川・千葉・埼玉の全域に火山灰が到達します。内閣府のワーキンググループによる被害想定では、以下のシナリオが現実味を帯びています。
■ 交通インフラの瞬時停止:レール上にわずか0.5mmの降灰があるだけで電車はスリップして運行不能になります。道路も0.5cm〜1cmで二輪車や一般車両のスリップ事故が多発し、数センチの堆積で完全通行止めとなります。航空機はエンジントラブルの危険から羽田・成田両空港が即座に全面閉鎖されます。
■ 大規模停電と断水の連鎖:火山灰は水分を含むと電気を通す性質を持ちます。雨が降れば碍子(がいし)と呼ばれる絶縁器具がショートし、関東全域で送電網がダウン。浄水場にも灰が混入し、急速ろ過装置が目詰まりを起こして広域断水が発生します。
■ 深刻な健康被害と物流停止:火山灰は燃えかすの灰ではなく、「尖ったガラス質の微粒子」です。吸い込めば喘息や気管支炎を引き起こし、目に入れば角膜を損傷します。物流トラックが動けなくなることで、スーパーやコンビニの棚は数日で空になり、約3,000万人以上が都市部で孤立状態に陥る計算となります。