民放ドラマから締め出された期間、西島秀俊が選んだのは逃避ではなく、映画への徹底的な没入でした。当時のインタビューや関係者の証言によると、彼は単館系映画館に連日通い詰め、年間300本以上もの古今東西の名作映画を鑑賞しながら、表現の引き出しを貪欲に増やしていったと伝えられています。
テレビ露出が途絶えた一方で、映画界の先鋭的な監督たちは西島の類まれな才能と映画への純粋な情熱を見逃しませんでした。1999年には黒沢清監督の映画『ニンゲン合格』で映画初主演を飾り、10年間の昏睡状態から目覚めた青年という極めて難度の高い役を演じきり、第9回日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞を受賞します。
さらに2002年には、北野武監督の映画『Dolls(ドールズ)』の主演に抜擢。深紅の組紐でつながれた男の悲哀と執念を無言の佇まいで体現し、ヴェネツィア国際映画祭をはじめとする国際舞台で絶賛を浴びました。ミニシアターでの泥臭い下積みと名匠たちとのセッションが、単なる「ビジュアル先行の若手俳優」から「作家性の高い映画俳優」へと脱皮させる決定打となったのです。