昭和から平成にかけて広く信じられていた「突き指をしたら指を引っ張って治す」という民間療法は、絶対にやってはならない極めて危険な行為です。関節包の断裂や靭帯の完全断裂、骨片が剥がれる剥離骨折を劇的に悪化させる原因になります。
特に親指は、ボールや相手選手と接触した際に強い外転力(外側に開く力)がかかりやすく、「母指尺側側副靭帯(UCL)損傷」、通称スキーヤーズサム(またはゲームキーパーサム)と呼ばれる重篤な怪我を併発しやすい特徴があります。
親指の突き指における骨折・重度靭帯断裂のセルフチェックリスト
受診の目安となる親指突き指の骨折の見分け方は以下の通りです。1つでも該当する場合は、テーピングでごまかさず直ちに整形外科を受診してください。
- 明らかな皮下出血と急速な腫脹:受傷後30分〜数時間以内に、親指の付け根から掌・手首にかけて紫色や黒赤色の内出血と激しい腫れが広がっている。
- 骨叩打痛・軸圧痛:親指の先端から付け根に向かって軽く押し込んだり、骨の部分を指先でトントンと軽く叩いたりした際に、関節ではなく骨自体に鋭い激痛が走る。
- 関節の側方動揺性(不安定感):親指の付け根がグラグラして力が入らず、ペットボトルのキャップを開ける、鍵を回す、紙をつまむといったピンチ動作ができない。
- 外見上の明らかな変形:左右の親指を見比べたときに関節の角度が不自然に曲がっている。
靭帯が完全に断裂して腱膜の下に潜り込んでしまう「ステナー病変(Stener lesion)」が発生している場合、自然治癒することはなく、早期の手術療法が必要となります。親指の靭帯損傷に対するテーピングは、あくまで断裂のない軽度〜中等度(不全断裂)の固定や、リハビリ期の保護に限定されます。