お茶の間の記憶に彼女の名を決定的に刻み込んだのが、NHK連続テレビ小説『カーネーション』のヒロイン・小原糸子役である。戦前・戦後の激動期をミシン一本で駆け抜けた女性の生涯を、驚異的なエネルギーで演じきった。
朝ドラの定型的な清純派ヒロイン像を打ち破り、怒鳴り、泣きじゃくり、泥臭く人生に立ち向かう糸子の姿は、多くの視聴者の心を掴んだ。少女期から中年期に至るグラデーションを声のトーンや歩き方の変化で見事に描き分けた芝居は、今なおNHKが誇る朝ドラ史の最高峰として語り継がれている。単なる人気女優の座に甘んじることなく、過酷な撮影スケジュールの中で表現の限界に挑み続けた経験が、その後の役者人生の強固な背骨となった。