市原隼人の原点を語る上で欠かせないのが、大手芸能事務所スターダストプロモーションに見出された少年期と、映画監督・岩井俊二との出会いである。2001年公開の伝説的日本映画『リリイ・シュシュのすべて』で主演に抜擢された彼は、思春期特有の壊れそうな脆さと痛切な純粋さをスクリーンに焼き付けた。
田園風景の中、ヘッドフォンから流れる音楽に逃避する少年の佇まい。あの繊細極まる表現力は、当時の映画界に強烈な衝撃を与えた。演出の手法に身を委ねながらも、天性の感受性で役の痛みをそのまま生きた経験が、表現者としての強固な土台を築き上げている。
無垢な少年から無頼の男へ。原点で培われた「役の魂に触れる感性」は、どれほど歳月を重ねても色褪せることなく、彼の芝居の深層に流れ続けている。