「吉田沙保里のコーチは誰なのか」という問いに対する答えは、時系列と役割によって明確に分かれます。選手時代の彼女を形作った主たる指導者は、基礎を叩き込んだ父親の吉田栄勝コーチと、至学館大学(旧・中京女子大学)で世界的王者に鍛え上げた栄和人監督の2名です。この両輪がいたからこそ、世界大会16連覇という不滅の記録が生まれました。
一方で、リオデジャネイロ五輪を終えた2016年11月、日本レスリング協会理事会において吉田沙保里氏自身がレスリング日本代表コーチに就任することが正式決定されました。当時は「選手兼任コーチ」という異例の肩書きであり、後輩選手たちのスパーリングパートナーを務めながら戦術眼を伝える重責を担いました。つまり、「誰に教わったのか」という文脈と「誰を教えているのか」という文脈の双方が、ファンや関係者の間で強く意識されているのです。