スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏が世界的ベストセラー『スマホ脳』で喝破したように、人類の脳構造はサバンナで狩猟採集を行っていた数万年前からほとんど進化していない。未知の情報を敏感に察知して生存率を高めようとする太古の生存本能が、現代のスマホ画面から発せられる無限の情報に対して誤作動を起こしている。
とりわけ脳に壊滅的な負担を強いるのが「マルチタスク」だ。動画を見ながらメッセージを返信し、ブラウザで調べ物をする行為は、脳内では同時並行処理ではなく、ミリ秒単位で意識を行き来させる「高速タスクスイッチング」にすぎない。この急激な切り替えの連続は、前頭葉に莫大なエネルギー消費を強いる。ロンドン大学の研究では、作業中のマルチタスクが一時的にIQを約10ポイント低下させ、その悪影響は徹夜明けの状態に匹敵すると報告されている。