漢字の深遠な世界を探求する上で外せないのが、東洋学の巨人であり白川静(漢学者・漢字研究者)による古代文字の解釈だ。「蜥(セキ)」と「蜴(エイ)」はいずれも偏(へん)に「虫(むしへん)」を冠しているが、古代中国において「虫」は昆虫だけでなく、地を這う爬虫類や小動物全般を広く指し示す部首であった。
難読漢字・語源学のアプローチで見ると、「蜥」のつく構造は敏捷に動き回る小動物のしなやかな身構えを象徴し、「蜴」のつくりは日光に照らされて皮膚が斑に変色する性質や、すばしっこく変化する形を表している。つまり「蜥蜴」という二文字の組み合わせは、古代中国の人々が観察した生き物の形態と動性を余すところなく捉えた造字表現なのだ。漢字一字一字に込められた描写力には驚かされる。