肺の動脈を塞ぐ血栓の約9割は、足の深い部分を通る静脈にできる「深部静脈血栓症(DVT)」が原因です。血栓が作られる背景には、主に「血流の停滞」「血管内皮の損傷」「血液の凝固性亢進」という3つの要因が絡み合っています。
具体的には、長時間の座位や寝たきり状態によって足の筋ポンプ作用が働かなくなると、静脈内に血液がよどんで固まりやすくなります。これに加えて、喫煙習慣、経口避妊薬(ピル)の服用、脱水、肥満、がんの罹患などが重なると、血液の粘度が増して血栓形成リスクが跳ね上がります。
また、足の静脈弁が壊れて血管がコブのように浮き出る下肢静脈瘤を抱えている人は、血流不全から血栓症を併発しやすい傾向があります。さらに見逃せないのが外科手術に伴うリスクです。整形外科の人工関節置換術や開腹手術の後は、長時間の麻酔と術後安静、血管の微小な損傷が重なるため、術後合併症として最も警戒すべき疾患の一つに挙げられています。