論客としての顔に加え、小説家としての異彩もまた目を張る。講談社から刊行されたデビュー小説『デッドライン』は、野間文芸新人賞を受賞するなど文学界に強烈なインパクトを与えた。修士論文の執筆に追われる大学院生の日常と、夜の都市空間で交錯する性的欲望、そして哲学的考察が緻密な文章で紡ぎ出されている。
論理的な言葉の極限で立ち現れる身体の揺らぎや音調。哲学的な概念が抽象論にとどまらず、物語という肉体を得て動き出す瞬間のドライブ感は圧巻だ。フィクションとエッセイ、論考の境界線を軽やかに横断する彼の文筆活動は、小説という形式そのものの可能性を広げ、日本文学の新潮流を形作っている。