外尾氏の手掛けた仕事のなかでも、後世に語り継がれる金字塔が「生誕のファサード」を飾る15体の天使像の復元と、巨大な「生誕の門の扉(ブロンズの扉)」です。
生誕のファサードは、キリストの誕生と生命の喜びを表現したガウディ生前唯一の建造エリアであり、細密な彫刻で覆い尽くされています。内戦で破壊された天使たちの破片を拾い集め、ガウディが意図した楽器(ハープ、リュート、バイオリンなど)を持たせた天使群を蘇らせた作業は、狂気にも似た執念の産物でした。外尾氏は天使たちの顔立ちに東洋的な特徴を取り入れたわけではありませんが、生命の息吹そのものを石から彫り出す東洋的な自然観を注ぎ込み、建築全体に圧倒的な躍動感を与えました。
さらに圧巻なのが、2014年から2015年にかけて設置された「生誕の門の扉」です。緑青のブロンズで作られたこの扉には、ツタやカボチャ、野花が生い茂り、そこへカナブン、カマキリ、テントウムシ、スズメバチといった無数の昆虫や小動物が精緻に鋳造されています。「石の聖堂に命の緑を吹き込む」というガウディの構想を具現化したこの扉は、教会建築の常識を覆すものでした。
重要な歴史的事実として、サグラダ・ファミリア全体がユネスコの世界遺産に登録されているわけではないという点があります。2005年に世界遺産として正式登録されたのは「生誕のファサード」と「地下礼拝堂」のみです。つまり、外尾氏が血を吐く思いで復元・制作に心血を注いだ空間そのものが、ガウディ自身の作品と同等の価値を持つ普遍的遺産として世界に認められたのです。