松本駅から車を走らせること約30分。つづら折りの山道を進むにつれ、周囲の風景は都市の表情を完全に失い、深く鬱蒼とした原生林へと変化していく。目的地に近づくにつれて携帯電話の電波表示が影を潜め、心地よい静涼感が車内に満ちてくる感覚を誰もが覚えるはずだ。
ここは国定公園の特別保護地域内。新たな開発が厳しく制限されたこの地だからこそ、手つかずの自然が目一杯の呼吸を続けている。四季折々に表情を変える薄霧や、朝焼けに染まる木々の梢。自然の懐に深く抱かれる感覚は、日常に疲れ切った現代人の心身を緩やかに解きほぐす。