「痛くない日は一日もない。でも、診断書には『加齢による変性』と書かれる」。ある80代の女性患者は、取材に対してそう語った。カネミ油症の認定患者は全国に約1,300人(2026年時点の関連省庁公表資料に基づく概数)とされるが、この数字が被害の全体像を示していないことは、被害者団体「カネミ油症被害者会」が繰り返し訴えてきた。
認定基準の狭さ、立証責任の重さ、そして何より発症から半世紀以上が経過したことで、油症由来の症状と加齢性疾患の区別が制度的に困難になっている。とりわけ、しびれや疲労感、目の乾燥感といった主観的症状は客観的な数値化が難しく、申請しても認定されない「未認定被害者」が少なからず存在する。九州大学を中心とした研究グループは、PCB曝露者と一般高齢者の症状頻度を比較する疫学調査を継続しているが、その結果が救済制度の見直しに直接結びつくまでには至っていない。
2026年現在も、被害者会は国を相手取った損害賠償請求訴訟や、救済策の拡充を求める陳情・交渉を続けている。高齢化による原告の死去が相次ぐなかで、「生存しているうちに結論を」という切迫した声は、裁判の傍聴席で何度も聞かれてきた。