人間が「美味しい」と感じる脳の仕組みを徹底的に刺激するのが、このカレーの構造だ。タイ料理の根幹をなす要素は「甘・酸・塩・辛」の絶妙なバランスだが、マッサマンカレーはそのバランスが最も高次元で調和している。
口に入れた瞬間に広がるココナッツミルクとパームシュガーの優雅な甘み。続いて追いかけてくるタマリンドの果実味あふれる酸味。ナンプラー(魚醤)がもたらす深い旨味と塩気。そして最後に、じわじわと身体を温めるスパイスの芳醇な辛味。どれ一つとして主張しすぎることなく、完璧な四重奏を奏でる。この計算し尽くされた黄金比こそが、世界中の美食家を唸らせ続ける最大の秘密だ。