福井のそばを語る上で絶対に外せないのが「在来種」の存在だ。多くの蕎麦産地が収穫量や耐病性に優れた品種改良種へとシフトするなか、福井県は県内各地で古くから栽培されてきた固有の在来種を、頑なまでに守り続けてきた。
大野在来、丸岡在来、勝山在来、今庄在来――。驚くべきことに、同じ福井県内であっても市町村や集落ごとに種が異なり、粒の大きさや香り、甘みの質が微妙に変化する。小粒ながら引き締まった実には濃密な旨味が凝縮されており、これらを他地域の種と交配させずに維持・管理する体制は全国でも類を見ない。
「この土地の土と水、そして風がなければこの味は出ない」。地元の農家は胸を張る。効率を犠牲にしてでも本物の味を継承する姿勢こそが、福井のそばを唯一無二の存在たらしめているのだ。