相撲協会の理事長選出を語る上で欠かせないのが、部屋の連合体である「一門(出羽海、二所ノ関、時津風、高砂、伊勢ヶ濱)」の勢力図です。歴代理事長の出身一門の内訳を精査すると、相撲界の権力構造がどのように変化してきたかが鮮明に浮かび上がります。
長らく角界には「出羽海にあらずんば理事長にあらず」とまで囁かれた時代がありました。出羽海一門は所属する年寄株の数が圧倒的多数を占めており、話し合いによる互選という建前のもとで、事実上出羽海一門の推す候補が自動的にトップへ就任する不文律が成立していたためです。
歴代理事長の就任条件には、明文化された規定はないものの、暗黙の了解として「横綱または大関経験者であること」、そして「協会の主要事業(巡業部、審判部、事業部など)の部長職を歴任し、実務に精通していること」が必須とされてきました。しかし、派閥政治の弊害が問題視されるようになり、2000年代以降は一門の縛りを越えた政策重視の合従連衡へと移行していきました。