1969年、言葉を持たないスキャットのみで構成された『夜明けのスキャット』が驚異的なミリオンセラーを記録し、由紀さおりは鮮烈なスターダムを駆け上がりました。しかし、あまりのインパクトの強さは「スキャットの歌姫」という固定観念を生み、次の一手に対する音楽関係者の視線は極めてシビアなものだったと伝えられています。
そのプレッシャーを鮮やかに打ち破ったのが、1970年7月5日に発売されたシングル『手紙』でした。高度経済成長期の熱狂と大阪万博の喧騒に沸く日本において、本作が描き出した内省的で哀切な世界観は、人々の心の隙間に深く染み渡りました。発売直後から爆発的なセールスを記録し、オリコン週間ランキングで6週連続首位を獲得。年間チャートでも屈指の実績を残し、彼女が「一発屋」などではなく、真の表現者であることを決定づけました。