こうした保護者間の不和は、個人の資質の問題に矮小化されがちだが、制度疲労を起こした地域組織の構造的欠陥も見逃せない。日本PTA全国協議会を巻き込んだ加入の任意性論争や組織改革が進む一方で、旧態依然とした同調圧力を前提とする活動現場では、依然として役員選出や行事運営を巡る激しい摩擦が絶えない。義務感と不公平感が交錯する現場は、ストレスの矛先を個人へ向ける格好の引き金となる。
文部科学省がスクールカウンセラーの配置拡充など児童・生徒向けのケアを急ぐ一方、保護者同士のいじめや深刻な対人トラブルに対して、学校側は「民事不介入」の原則を理由に介入を躊躇するケースが目立つ。教育評論家の尾木直樹氏が長年警鐘を鳴らし続けているように、親の心理的ストレスや孤立は、巡り巡って子どもの情緒発達に重大な影響を及ぼす。大人の問題を大人の責任として是正できない社会構造そのものが、事態を長期化させる最大の共犯者となっている。