本作の文学的・社会的評価を決定づけたのが、第25回手塚治虫文化賞短編賞の受賞である。コミックエッセイというジャンルが、単なる個人的な日常記を超えて、現代社会の構造的課題を射抜く力強いカルチャー表現として認められた瞬間だった。この受賞は出版業界および漫画業界に大きな衝撃を与えた。
それまでの漫画界において、夫婦の日常トラブルはどこかコミカルに消化される傾向が強かった。しかし、野原広子氏が切り開いた視点は、身近な生活の中にある「歪み」を直視させ、読者に強い反省と問いを突きつけるものであった。これにより、コミックエッセイの持つ表現力と市場価値は飛躍的に高まり、後続の作家たちにも多大な影響を与えた。