軽やかに車を引いているように見えて、乗客2名と車体重量を合わせれば200キロを超える。これを炎天下でも真冬の木枯らしの中でも笑顔で牽引するのが人力車俥夫だ。その過酷かつ緻密な仕事ぶりは、NHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』をはじめとする数々のメディアでも特集され、大きな反響を呼んだ。
彼らが叩き込まれるのは、単なる脚力や体力ではない。乗客の重心に合わせたミリ単位のバランス調整、段差で揺れを感じさせないブレーキワーク、そして相手の興味関心や感情の機微を瞬時に察知する対話術だ。数カ月に及ぶ厳しい研修と検定を突破した者だけが、背中に誇り高き屋号を背負って路上に立つことを許される。