倉本聰が紡ぎ出した『北の国から』の真髄は、清廉潔白な善人ばかりではなく、誰もが弱さやずるさ、愚かさを抱えた「生身の人間」として描かれている点にあります。
黒板五郎(田中邦衛)は、不器用で頑固でありながら、底知れぬ愛情で子どもたちを包み込む父親像を確立しました。田中邦衛の人間味あふれる怪演は、時に情けなく、時に圧倒的な威厳を放ち、国民的な父親像として愛されました。
主人公・黒板純(吉岡秀隆)は、都会への憧れを捨てきれず、見栄を張り、何度も過ちを犯す「等身大の弱さ」を持つ青年です。吉岡秀隆によるトレードマークのモノローグ(「〜なわけで……」)は、純の心の揺らぎを痛々しいほどリアルに伝えました。
妹の黒板螢(中嶋朋子)は、幼少期の天使のような健気さから一転、看護師となってからは不倫や未婚の出産など、父を最も苦しめる波乱の人生を歩みます。清純と情念の狭間で揺れる中嶋朋子の繊細な演技は、作品に深い奥行きをもたらしました。
彼らを取り巻く周囲の人物たち――面倒見の良い親友の草太(岩城滉一)、純の悪友であり螢を無償の愛で支えた正吉、温かく黒板家を見守り続けた中畑のおじさん(地井武男)――それぞれの人生が濃密に絡み合い、富良野という土地そのものがひとつの巨大な生命体として描かれています。