近代日本の歴史を紐解けば、軍隊と巨大熊の対峙は決して突飛なファンタジーではない。大人気漫画『ゴールデンカムイ』でも克明に描かれた通り、かつて北海道に駐屯した大日本帝国陸軍第七師団の歴史は、未開の原野でヒグマと対峙し続けた屯田兵の記憶と重なる。明治から大正にかけての開拓期、軍の銃火器はたびたび狂暴化した熊の討伐に駆り出された歴史的事実がある。
三毛別羆事件をはじめとする凄惨な獣害事件の現場には、常に軍や警察の影があった。100年以上の時を経て、近代化された都市空間のすぐ隣で再び「軍と熊」の対峙が議論される皮肉。それは、自然の圧倒的な暴威の前に、人間が築き上げた近代社会の脆弱性が再び露呈した瞬間とも言える。