制度的なメリットが際立つ一方で、近年アンダーグラウンドで深刻化しているのが宗教法人売買の実態です。全国に約18万存在する宗教法人のうち、過疎化や後継者難によって活動実態を失った「休眠宗教法人」は数千件規模にのぼると推定されています。
ブローカーを通じて取引される休眠法人の相場は、1件あたり1,000万円から5,000万円前後。過去に数々のトラブルを潜り抜けてきた元仲介業者は、当時の取材で次のように手口を証言しています。
「買い手の目的は主に3つ。富裕層による宗教法人の相続税対策、風俗店やラブホテル、納骨堂などの許認可ビジネスへの流用、そして海外マネーのロンダリングだ。宗教法人の代表役員を書き換えて実質支配すれば、法人の銀行口座を自由に動かせる。個人財産を宗教法人へ寄付という形で移転させ、親族を役員にして非課税枠を使いながら報酬を還流させるスキームが長年横行していた」
しかし、こうした脱法行為の命脈はすでに尽きつつあります。国税査察部(マルサ)は、過去3年間活動実績のない休眠法人が突如として役員変更を行い、高額な資金移動や不動産登記を申請した事例をAIシステムで即座に検知・フラグ付けする仕組みを確立しました。実態の伴わない宗教活動に対しては、外形上お布施を装っていても「実質所得者課税の原則」を適用し、重加算税を含む億単位の追徴課税処分を下す事例が2026年以降相次いでいます。
さらに、宗教法人を買い取ったものの、包括宗教団体(宗派の本山)から役員承認を拒否されたり、近隣住民による建設差し止め訴訟に巻き込まれたりして、投じた資金を回収できずに破綻する買い手が後を絶ちません。「宗教法人を買えば税金から逃れられる」という甘い囁きは、今や刑事告発と破滅に直結するトラップと化しています。