「朝出せば夕方仕上がる」という謳い文句には、店頭のポスターを熟読しなければ見落としがちな厳しい前提条件が付帯しています。特にスーツや礼服など、着用スケジュールが差し迫っている品物を持ち込む際には、次の3つの落とし穴に警戒しなければなりません。
第1の関門は「受付デッドライン」です。多くの即日仕上げ対応店では「午前10時まで」、ユニット店でも「午前11時まで」の預け入れを絶対条件として定めています。トラック便の出発時刻や溶剤温度の上昇スケジュールに連動しているため、わずか数分の遅れであっても当日の処理ラインに乗せることはシステム上不可能です。
第2の関門は「素材と装飾の制限」です。一般的なウール・ポリエステル混紡のビジネススーツは即日工程に回せますが、以下のような品目は即日仕上げの対象外として弾かれます。
- シルク、カシミヤ、アンゴラなどの高級獣毛・デリケート繊維
- 合皮・ポリウレタンコーティングが施された衣類(経年劣化による剥離リスクがあるため)
- 貝ボタン、水牛ボタン、複雑なビジューやスパンコールが付いた装飾衣類
- 広範囲のシミや血液などのタンパク質汚れ(入念な前処理と自然乾燥が必要なため)
第3の盲点は「休業日と日曜ダイヤ」の存在です。商業施設内のインショップを除き、路面型のクリーニング店では日曜日の営業時間が平日より短縮されていたり、取次工場の稼働休止に伴い「日曜・祝日は当日仕上げ不可」としている店舗が主流です。月曜日の朝に着用したいスーツであれば、土曜日の午前中までに預け入れるのが安全圏の防衛ラインです。