「排水溝が自分の髪で真っ黒に埋まる」「ブラッシングをするたびに床一面に毛が散らばる」。外来を訪れる患者の多くは、感染からおよそ2〜3ヶ月が経過した頃に突然始まる激しい抜け毛の恐怖を生々しく語る。感染の急性期には味覚障害や倦怠感に苦しみ、ようやく体調が回復したと思えたタイミングで発症するため、心理的な打撃は計り知れない。
国立国際医療研究センター(NCGM)が実施した初期の大規模追跡調査においても、退院患者の約4人に1人が発症後数ヶ月の時点で脱毛を経験している事実が浮き彫りになった。男女や年齢層を問わず発症が確認されているが、特にロングヘアの女性や美容意識の高い若年層において精神的苦痛が深刻化しやすい。医療・ヘルスケア産業全体でも頭皮ケアやウィッグの需要が急変動するなど、社会的にも無視できない影響が広がっている。