2017年8月、阪神甲子園球場の夜空に響き渡った校歌を、覚えているファンも多いはずだ。それまで「深紅の大優勝旗が荒川を越えない」と揶揄され続けた埼玉県の高校野球界に、悲願の初優勝をもたらしたのが花咲徳栄だった。主将の長谷川示宥や主力を張った西川愛也(現・埼玉西武ライオンズ)、高橋昂也など、個の能力とチームの結束が見事に噛み合ったあの夏は、県内の高校野球シーンを根本から塗り替えた。
それまでの「守り勝つ野球」から「圧倒的な打力で打ち勝つ野球」への劇的なシフト。1試合平均ふた桁安打を叩き出す強力打線は、全国の強豪校に強烈な衝撃を与えた。あの日を境に、埼玉の高校球児たちにとっての目標は「甲子園出場」ではなく「甲子園で頂点に立つこと」へと引き上げられたのだ。