江戸の長屋に響いたのは、ため息ではなく爆笑だった。当時の人々は、これらの艶画を「笑い絵」と呼んで親しんでいた。男女がぎこちなく絡み合い、時に足が滑り、時に滑稽な表情を浮かべる。そこには、現代のアダルトコンテンツのような陰湿な消費の視線はない。
権力が風紀を取り締まろうと町触れを出すたび、絵師たちはその裏をかいた。江戸時代文化が生んだこの反骨精神こそが、表現の極限を切り拓いた原動力だ。幕府の厳しい検閲の目をかいくぐり、無署名で世に放たれた作品群には、名工たちの凄まじい技巧と諧謔が惜しみなく注ぎ込まれている。浮世絵というジャンルにおいて、最も贅沢な絵の具と最高峰の彫師・摺師の技術が投入されたのは、実は裏で流通したこうした秘画だったのだ。