山形観光の代名詞ともいえる銀山温泉と山寺(宝珠山立石寺)。一見すると以前と変わらぬ佇まいを見せていますが、現場で起きている運営手法のアップデートこそが、近年の満足度急上昇を支えています。
銀山温泉では、過度なオーバーツーリズムによる景観悪化や滞在満足度の低下を防ぐため、冬季の夕刻以降におけるマイカー規制および入場チケット制が完全に定着しました。かつては日帰り客のすし詰め状態が発生していたガス灯の点灯時間帯も、現在は静寂と温かな光が調和した本来の情緒を取り戻しています。宿泊客からは「街並みの写真撮影でストレスを感じることが激減し、タイムスリップしたような没入感を味わえた」との評価が定着し、リピート率の底上げに直結しています。
一方の山寺は、松尾芭蕉の「閑さや岩にしみ入る蝉の声」で名高い1,015段の石段を登る修行の道です。近年は早朝参拝の魅力がSNSを中心に再評価され、朝靄(あさもや)が立ち込める五大堂からのパノラマ絶景を狙って、近隣の宿に前泊して挑む旅行者が急増しました。単に「階段がきつかった」という一過性の観光から、「心身をリフレッシュする精神体験」へと認識がシフトしたことが、旅慣れた大人世代を惹きつけて離さない構造的要因です。