円周率の日の起源を辿ると、1988年のアメリカ・カリフォルニア州に行き着きます。発案者は、体験型科学博物館の草分けとして世界的に名高いサンフランシスコ科学館(エクスプロラトリアム)に勤務していた物理学者、ラリー・ショー(Larry Shaw)氏です。
当時の科学館関係者の記録によると、ショー氏は「難解で抽象的と思われがちな数学の魅力を、誰もが五感で楽しめる参加型フェスティバルに昇華できないか」と模索していました。そこで着目したのが、円周率の近似値「3.14」とカレンダーの「3月14日」の合致でした。初回イベントでは、職員や来館者が館内の円形スペースを行進しながら、手作りのフルーツパイを切り分けて食べるというユーモア溢れる試みが行われました。この素朴なセレモニーが、知的好奇心旺盛なサンフランシスコ市民の間で爆発的な支持を獲得したのです。
草の根の科学イベントとして始まったこの試みは、瞬く間に全米の教育界へと波及しました。2009年3月12日には米国下院議会において「全米円周率の日(National Pi Day)」を正式に支援する決議案(H.Res.224)が圧倒的多数で可決され、国家的な記念日としてのステータスを確立します。
さらに2019年11月、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の第40回総会において、3月14日を「国際数学の日(International Day of Mathematics)」と定める宣言が採択されました。日本では公益財団法人日本数学検定協会が1997年に同日を「3月14日 数学の日」として独自に制定しており、現在では世界規模で科学・技術・工学・数学(STEM教育)の重要性を啓発するマイルストーンとして機能しています。