日本語は、世界的に見ても自動詞と他動詞のペア(自他対応)が非常に豊富な言語として知られる。そしてこの特性が、日本人の心理やコミュニケーション文化に深く作用している。
「ドアが開く」という自動詞表現は、開く現象そのものにスポットを当てる。誰が開けたのかという主体は背景に退き、あたかも自然発生的に事態が進行したような印象を与える。一方、「ドアを開ける」という他動詞表現は、開けた主体の行為を直接的に告発・強調する。
危機管理の現場や謝罪会見を思い出してほしい。「情報が漏洩した」と語るか、「情報を漏洩させた」と語るか。前者は自動詞的アプローチであり、状況の不可抗力性をにじませる。後者は他動詞的であり、自らの過失を認める姿勢を示す。日本語における自他選択は、単なる文法表現を超えた「責任のポリティクス」なのだ。