スーツの上にダウンベストを着ている当事者と、それを取り巻く職場の同僚たち。双方の率直な声を取材・検証すると、「機能性の恩恵を享受する着用者」と「美意識や違和感を覚える周囲」の間に横たわる心理的ギャップが浮き彫りになります。
都内のITコンサルティングファームに勤務する40代男性は、自らの通勤スタイルについて次のように語ります。
「冬場、ジャケットの上に厚手のウールコートを着ると、つり革を掴むときに肩が凝り、満員電車の暖房で汗だくになってしまう。ダウンベストなら両腕が完全にフリーになり、駅の階段の上り下りも驚くほど軽快です。一度この身軽さを覚えると、重いコートには戻れません。もちろん、クライアントのオフィスに入る手前で必ず脱いでバッグに畳み込みますが、通勤着としてはこれ以上ない相棒です。」
一方で、大手金融機関の人事部門に所属する30代女性からは、手厳しい現場の指摘が寄せられました。
「丸の内界隈でも、スーツの上から黒のダウンベストを着ている方をよく見かけます。ただ、失礼ながらサイズが合っていない方が多く、ベストの裾からグレーのジャケットがしっぽのように出ているのを見ると『身だしなみに無頓着な人なのかな』と感じてしまいます。機能的なのは理解できますが、初対面のビジネス相手として現れたら、少し身構えてしまうのが本音です。」
このように、愛用者の多くは「身体的なストレス軽減」という切実な理由から選んでいるものの、周囲の視線は「身だしなみの調和」を厳格にジャッジしています。この温度差を認識しないまま無頓着に着用することが、ネット上で「ダサい」「おじさん臭い」と揶揄される根本要因となっています。