スクリーンに彼が現れるだけで、空気の密度が一変した。眉間に寄る深いシワ、斜めに歪む独特の唇、そして哀愁と可笑しみが同居するダミ声。田中邦衛という役者が持っていた強烈な個性を、二次元の世界へと鮮烈に落とし込んだのが『ONE PIECE』の海軍本部大将・黄猿ことボルサリーノだ。
原作に彼が初登場した際、日本のファンは一目で膝を打った。「あの田中邦衛が、光の速度で動く世界最強クラスの海軍として立っている」という衝撃。それは単なるパロディの域を遥かに超えていた。彼の持つ独特の脱力感と、裏に秘めた底知れぬ凄みが、キャラクターへ圧倒的なリアリティを与えたのである。