北九州市の成人式が現在のような極彩色のスタイルへと舵を切ったのは、2003年(平成15年)頃のことでした。当時、地元の新成人グループが「一生に一度の晴れ舞台で誰よりも目立ちたい」「地元の仲間全員でお揃いの袴を着て絆を示したい」と、金や銀の特注袴を注文したことが直接のきっかけとされています。
一見すると派手さや威圧感を競い合っているように映るかもしれませんが、衣装の細部をつぶさに観察すると、そこには明確なメッセージが刻まれています。背中や胸元に大きく刺繍されているのは、暴走族のような威嚇の言葉ではなく、「産んでくれてありがとう」「親孝行」「家族への感謝」、あるいは自らの出身中学校名や恩師の名前です。
地元関係者への取材によると、参加する若者の多くは決して裕福な家庭ばかりではなく、中学・高校を卒業してすぐに現場仕事などで社会に出た若者も少なくありません。「一人前になって成人を迎えた姿を親に見せたい」「ここまで育ててくれた母に最高の笑顔を届けたい」という純粋な孝行心が、あの眩いばかりのド派手な衣装へと結実しています。