東京・渋谷の劇場。開演15分前、ロビーの空気は異様な緊張感に満ちていた。
チケットは全公演、発売開始からわずか数分でソールドアウト。再販サイトではプレミアム価格で取引される事態が続いている。これほどまでに人々を惹きつける理由は何か。観客層の多くは20代から30代の若者たちだ。派手な照明や派手な演出を削ぎ落とし、静寂と影だけで構成された舞台空間。そこには、日頃のSNSの喧騒とは真逆の世界が広がっている。
客席の照明が落ちる。完全な暗転。呼吸音すら憚られる沈黙のなか、舞台中央の役者が静かに言葉を紡ぎ出す。観客は固唾をのんでその声に耳を傾ける。ある観客は終演後、「生きることに疲れ果てていたが、この舞台を観て初めて息ができた気がした」と語った。死を題材にしながらも、結果として生の本質を突きつけるという逆説。それこそが、この公演が放つ強烈な磁場の正体だ。