発作性上室頻拍の確定診断において最大の障壁となるのが、「発作が起きているまさにその瞬間の心電図波形」を記録しなければ診断がつかないという点です。病院の一般外来で行われる数十秒間の標準12誘導心電図では、発作時以外の心電図波形は正常(WPW症候群のデルタ波を除く)であることが多く、異常を検知できません。
24時間心電図を記録するホルター心電図検査を行っても、「検査機器を装着した日に限って発作が一度も起きない」という現象が日常茶飯事のように起こります。これが原因で医療機関を何件も巡る「ドクターショッピング」に陥り、最終的に精神科へ回されて抗不安薬を処方される患者の苦悩は深刻です。
この診断の壁を劇的に打ち破っているのが、家庭用携帯型心電計やスマートウォッチの急速な進化です。常に手首に装着されているスマートデバイスは、激しい動悸が始まった瞬間に指を竜頭に当てるだけで、医療用単極心電図に匹敵する波形データを瞬時に記録できます。現在では、循環器専門医の外来においても、患者がスマートフォンアプリから出力したPDF心電図データを持ち込むことで、「発作性上室頻拍」の確定診断へと直結し、速やかに専門治療へと移行できるケースが標準化しています。