『ゴールデンカムイ』という作品は、主要人物であっても容赦なく命を落とす過酷なリアリズムが特徴です。その中にあって、谷垣源次郎は読者から「最も死亡フラグを乱立させながら、すべてをねじ伏せた男」として語り継がれています。
鶴見中尉率いる第七師団の脱走兵となり、杉元佐一やアシリパたちと行動を共にする中で、谷垣は謎多きアイヌの占師・インカラマッと深く心を通わせていきます。鶴見陣営に人質として囚われ、谷垣の子を身ごもっていたインカラマッを救出するため、谷垣は単身で敵陣へと突入。鯉登少尉や月島軍曹との死闘、幾重にも張り巡らされた追撃戦を、驚異的な生命力とマタギ仕込みの機転で切り抜けます。
長谷川写真館(かつて鶴見が家族と過ごした因縁の地)にて、鶴見中尉の目前でインカラマッが無事に長女を出産したシーンは、本作における最大級のエモーショナルな転換点となりました。鶴見をして「親子の情愛」を認めさせ、追撃の手を引かせた谷垣の覚悟は、まさに暴力と策謀が支配する世界に灯った唯一の光でした。
最終回において明かされた谷垣源次郎の結末は、読者に大きな感動と安堵をもたらしました。故郷である秋田県阿仁へとインカラマッや家族と共に無事帰還。その後、夫婦の間には合計15人もの子どもが生まれ、谷垣はマタギとしての生業を全うしながら、昭和22年(1947年)に77歳の天寿を全うしました。血塗られた金塊争奪戦から完全に脱落し、「命を奪う側」から「命を繋ぐ側」へと生き方をシフトさせたことこそ、彼が最高の幸福を掴んだ最大の勝因でした。