塩沢氏の真骨頂を示すもう一つの例が『クレヨンしんちゃん』の「ぶりぶりざえもん」だ。「救いのヒーロー」を名乗りながら、強い者につく腰抜けで、法外な助け料を要求する豚のキャラクター。あの低音美声で繰り出される身勝手なセリフの数々は、シュールな笑いを生み出し、世代を超えて愛された。
一方で、ゲーム『メタルギアソリッド』の「サイボーグ忍者(グレイ・フォックス)」では、戦いの中でしか己の生を実感できない狂気と悲哀を、狂おしいまでの熱量で演じ切った。命を懸けたバトルアクションの極限状態で見せた「俺は……お前と戦いたかった」という魂の叫びは、ゲーマーの記憶に深く刻まれている。これほど振れ幅の大きいキャラクター群を同一人物が演じていた事実には、驚嘆するほかない。