植物学的な特徴に加え、花言葉のドラマ性を決定づけたのがヨーロッパに伝わるギリシャ神話の悲劇です。
伝説によると、神々が暮らすオリュンポスの宮殿で大規模な宴が開かれた際、祝宴の席に飾られていた「黄金のリンゴ」が1つ紛失する事件が起きました。神々の間で犯人捜しが行われ、宮殿で給仕を務めていた心清らかな美しい侍女に疑いの目が向けられます。
侍女は「私は決して盗んでおりません」と涙ながらに身の潔白を主張しましたが、疑念を晴らす証拠を見つけられず、不当にも神界から追放処分を受けてしまいます。地上へと落とされた彼女は、無実の罪を着せられた絶望と悲嘆の中で荒野を彷徨い、衰弱して非業の死を遂げました。
哀れな侍女の死を悼んだ神霊は、彼女の魂をホウセンカの花へと転生させました。ホウセンカとなった彼女は、死してなお「自分の身にはやましいものなど何一つない」と証明しようと、誰かの手が触れるとすぐに自らの袋(果実)を弾けさせ、中身をさらけ出して見せるようになったと伝えられています。
つまり、「私に触れないで」の裏には、「触って中を見てください、私は何も隠していません」という無実の主張と切実な告白が隠されているのです。