クライマックスの人工衛星「あらわし」激突直前、鼻血を流し、息も絶え絶えになりながらパソコンのエンターキーを押し込む小磯健二。その瞬間に発せられる「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!」という叫びは、映画史に残るカタルシスをもたらします。当時、健二と同じ高校生(16歳)だった神木隆之介は、アフレコ現場において並々ならぬ熱量でこのシーンに挑んでいました。
細田守監督の制作秘話インタビューによると、監督が神木に求めたのは「綺麗に整ったカッコいい芝居」ではなく、「必死で無様でもいいから、すべての想いをぶつける生々しい叫び」でした。神木は喉を潰すほどの勢いで何テイクも絶叫を重ね、酸欠寸前の状態でマイクに向き合ったと明かしています。少年特有の声の裏返りや、息の混じった掠れ具合がそのまま採用されたことで、計算では生み出せない究極のリアリティが吹き込まれました。
この台詞は単なる送信確認の言葉ではなく、OZの保守権限を取り戻し、陣内家と世界を救うための「すべての希望を託す祈り」そのものでした。若き日の神木隆之介の類まれなる表現力と細田監督の徹底した演出方針が合致したからこそ、世代を超えて胸を打つ名シーンが完成したのです。