下弦の伍・累の敗死をきっかけに無限城へ緊急招集された下弦の鬼たち。美しい女性の姿に擬態した鬼舞辻無惨を前に、下弦の肆・零余子が命を落とすことになった直接的な引き金は、「無惨の読心能力」と「生き延びようとする反射的な否定」の衝突でした。
無惨は下弦の鬼たちに対し、「累が殺されたこと」「下弦の鬼が百二十年余り顔ぶれが変わるばかりで鬼殺隊の柱を一人も葬っていないこと」への苛立ちを露わにします。そして、先んじて無惨の意図を汲み取れず思考を読まれて殺害された下弦の陸・釜鵺(かまぬえ)の惨劇を目の当たりにした零余子は、極度の恐怖から全身を震わせることしかできませんでした。
その際、無惨の冷徹な眼光が零余子へと向けられます。
「お前はいつも鬼狩りの柱と遭遇した場合、逃亡しようと考えているな」
無惨のこの追及に対し、零余子は恐怖のあまり顔面を蒼白にしながら、必死に言葉を絞り出しました。
「いいえ考えていません! 私は貴方様のために命をかけて戦います!」
この叫びこそが、彼女にとっての決定打となりました。思考をすべて読み取ることができる無惨にとって、心中にあった逃避願望を否定することは「自分に対する明確な嘘」であり「反論」そのものだったのです。無惨は「お前は私の言うことを否定するのか」と冷酷に言い放ち、零余子は反弁の余地すら与えられず、瞬時に異形の触手によって貪り食われるという無惨な結末を迎えました。