映画ファンやドラマ視聴者にとって、佐藤二朗といえば「福田雄一監督作品の常連」「予測不能な怪演」「愛されキャラ」という印象が強いかもしれません。しかし、彼の創作活動の原点は1990年代に旗揚げした自主演劇ユニット「ちからわざ」にあります。舞台作品において佐藤二朗は、自ら脚本を書き下ろし、人間のエゴイズム、閉塞感、そして不条理な現実に喘ぐ弱者たちの姿を愚直なまでに描き続けてきました。
彼が自ら映画監督を務める根本的な理由は、単なる知名度を利用したタレント映画の製作ではなく、「商業エンターテインメントの枠組みではこぼれ落ちてしまう、人間の剥き出しの感情を記録したい」という抑えきれない表現衝動にあります。当時の舞台挨拶やインタビューにおいて佐藤二朗は「生きることに不器用で、みっともなくて、それでも生きざるを得ない人たちを全肯定したい」と語っており、その作家性は商業映画の常識を超えた生々しい熱量を生み出しています。