だが、既存の美術批評家や美術史家たちは、ラッセンの作品を長らく無視するか、過度な商業主義として切り捨ててきた。「画廊商法」「インテリアアート」といったレッテルが貼り付けられ、公立美術館のコレクションに収蔵されることはほとんどなかった。商業的成功とアートとしての評価がこれほど乖離した例も珍しい。
しかし、近年の視覚文化論の研究者からは異なる声が上がっている。「美術館に飾られるハイアートだけが美術ではない。高度経済成長から成熟社会へと向かう日本人の大衆的欲望や美意識を、これほどストレートに体現した視覚メディアは他になかった」という再評価だ。キッチュでありながら圧倒的な完成度を持つ表現は、今や90年代日本のポップカルチャーを象徴する重要な文化的資料として扱われつつある。