囲炉裏を囲み、赤々と燃える炭火の前に腰を下ろす。眼前に突き刺されたイワナが、じっくりと熱を蓄えていく。この店で受け継がれる秘伝の技法は、魚の串打ちから始まる。躍動感あふれる独特のS字状に串を通すことで、焼き上がりの美しさだけでなく、火の通り方に劇的な違いが生まれるのだ。
塩の振り方一つにも一切の妥協はない。皮の表面には薄く、尾びれと胸びれには焦げ付きを防ぐ飾り塩を施す。炭火からの距離を数ミリ単位で調整しながら、時間をかけてじっくり水分を飛ばしていく。この丁寧な手仕事こそが、川魚特有の臭みを完全に消し去り、旨味をギュッと閉じ込める極意である。