大河ドラマの歴代主演といえば、長年にわたり芸能界の頂点に君臨するベテラン俳優や、国民的な知名度を誇るスターが担うのが通例でした。その常識を打ち破り、当時25歳(発表時/放送開始時は27歳)という若さで吉沢亮が大河ドラマの主演に抜擢された背景には、NHK制作陣による明確な意図と確固たる確信がありました。
制作統括のチーフプロデューサーが当時の公式会見やインタビューで明かした証言によると、渋沢栄一役のキャスティングはオーディション形式ではなく、制作陣の満場一致による「オファー(一本釣り)」でした。最大の選定理由は、渋沢栄一という人物が持つ「圧倒的なエネルギー」「挫折を乗り越えるバイタリティ」、そして何より「近代日本を切り拓く知性と気品」を同時に体現できる唯一無二の存在だった点にあります。
決定打となったのは、2019年度前期のNHK連続テレビ小説『なつぞら』における山田天陽役の熱演です。吉沢亮はヒロインの人生に決定的な影響を与える青年画家を演じ、静かな佇まいの中に燃えるような情熱と繊細な感情を宿らせ、社会現象とも呼べる「天陽ロス」を巻き起こしました。吉沢亮のNHKドラマ出演歴におけるこの確かな実績が、大河ドラマ制作陣に「この俳優なら幕末から昭和初期までの激動を駆け抜けた渋沢栄一の生涯を預けられる」と確信させたのです。