ノストラダムスの全942編の四行詩の中で、唯一「明確な年月」が明記されていたことで世界的なパニックの引き金となったのが、第10巻72番の詩です。かつて日本中で暗唱されたその詩の百詩篇 原文と直訳を確認してみます。
詩を冷静に精読すると明らかな通り、原文のどこにも「地球の滅亡」や「人類の終焉」という直接の言葉は存在しません。ではなぜ、1999年7の月 恐怖の大王の詩が「人類滅亡の宣告」へと変貌したのでしょうか。
アンゴルモアの大王の正体を巡る諸説
謎めいた「アンゴルモア(Angolmois)」の正体については、言語学や歴史学の観点から複数の有力な仮説が提示されています。
- アングレーム(Angoulême)地方説:ノストラダムス存命当時のフランス国王フランソワ1世はアングレーム伯家の出身であり、フランス王家の権威復活を指した政治的詩であるとする見解。当時の古フランス語の綴りとして自然な一致を見せます。
- モンゴル帝国(Mongolois)のアナグラム説:東方からの脅威としてチンギス・ハーンなどの遊牧騎馬民族(モンゴル軍)の再来を警告したとする解釈。
- 宗教的象徴説:イスラム勢力(オスマン帝国)の地中海進出を恐れたヨーロッパ社会のキリスト教的終末観の投影。
「空から降る恐怖の大王」についても、天体現象(日食や彗星)あるいは占星術上の惑星配置を指しているというのが文献学者の共通認識です。しかし、20世紀後半のメディア環境と米ソ冷戦の核の影が、これを「核ミサイル」「環境破壊」「超巨大隕石の衝突」という破滅シナリオへと書き換えていきました。