かつてテレビ画面を通じて親しまれた明るいキャラクターは、現在では寄席のトリ(主任)を堂々と務める円熟味あふれる噺家の姿へと結実しています。九代目林家正蔵(本名:海老名泰孝)は、1962年12月1日生まれで現在63歳。落語協会において副会長などの要職を歴任しつつ、鈴本演芸場や浅草演芸ホールをはじめとする都内の定席で年間数百本もの高座に上がり続けています。
現在、彼の落語に対する評価はかつてとは劇的に様変わりしています。襲名直後は「大名跡に対して芸が追いついていない」といった厳しい声も聞かれましたが、徹底した古典落語の掘り起こしと地道な稽古の積み重ねにより、批評家や寄席通の間でも「しっとりとした人情噺や江戸の風情を醸し出す本格派」としての評価が定着しました。高座に姿を現すだけで場内をパッと明るくする天性の華と、年輪を重ねた味わい深い語り口が共存する稀有な存在となっています。