文字の形と筆順には、数千年の歴史に裏打ちされた合理的な理由が存在します。「由」の成り立ちを知ることは、正しい筆順を理屈で腑に落ちさせる最短ルートです。
漢字学の権威である白川静氏の体系や古代文字資料によると、「由」は取っ手(柄)のついた酒壺、あるいは瓢箪(ひょうたん)の形を象った象形文字とされています。壺の口から酒や液体が湧き出る、あるいは細い口から外へと通じている様子を表しています。
この器の口から中身が「出る」「生じる」という情景から、「物事の起こり」「原因・理由(よりどころ)」という意味へと発展しました。「自由(自らを行動の出どころとする)」「由緒(物事の始まりの筋道)」といった言葉は、すべてこの原義に根ざしています。
象形文字の造形として見ると、上部に突き出ている縦線は「酒器の口・注ぎ口」そのものです。器の本体(枠)を構え、まず特徴的な注ぎ口である中央の軸(3画目)を据えてから、中の仕切りと底を安定させるという筆順の流れは、器を組み立てる古代人の視線そのものをトレースしていると言えます。